公益社団法人御坊納税協会と日高納税貯蓄組合連合会の特別講演会が11日に御坊市民文化会館で開かれ、同協会会員や一般ら約200人が来場。講師に元経済産業省官僚で慶應義塾大学大学院教授の岸博幸氏(51)を迎えて「どうなる日本!?  今後の経済動向と地域活性化の鍵」をテーマに聴いた。岸氏はアベノミクスの「3本の矢」を分析しながら「御坊市など地方への効果が年明けから出てくる」との見通しを示した。
 岸氏は①金融緩和②財政出動(公共事業で7兆円の支出)③成長戦略(民間企業の強化)――の3本の矢について「何も特殊なことではなく、デフレを解消して物価を上昇させ経済を成長させるという当たり前の政策だが、非常に合理的であると言える。このうち、金融緩和と財政出動の2本目まではいい対応をしている」と高く評価。さらに「実態経済に効果が出てくるのは半年後。ことし4月からやり始めたので秋から都心部で徐々に効果が出ており、御坊市など地方には年明けから影響が出てくる」と予想した。ただ、「いずれも短期的、即効性のある政策で、効果が持続するのは長くて2年半。また、民間企業の体質が根本的に強化されるわけではない」と指摘しながら、「そこで必要となるのが中・長期的な政策となる3本目の成長戦略。私もこの策定に関わっているが、いまは全然ダメ」と断言。「成長戦略で民間企業の体質強化には二つの方法があり、一つは自力で頑張り切磋琢磨する。もう一つは欧米に比べ2倍ぐらい多い企業への各種規制を緩和すること。しかしこれについては霞ヶ関の官僚が嫌う。企業に自由を与えるよりもお金を渡そうという政策をやりたがるが、実はその官僚の抵抗に勝てない大臣に問題がある。官邸はやる気があってもすさまじく忙しく、大臣がしっかりしなければならないところ。名前は言わなくても分かると思うが、いまの厚生労働大臣が役所を仕切れないのが問題だ」とばっさり。その上で「アベノミクスが成功するかどうかは、3本目の成長戦略が鍵を握っている」と語った。
 このほか、「再来年には消費税10%への引き上げを控えている上、統一地方選や自民党総裁選もあるため、自民党としては政治的な理由で景気を悪くするわけには絶対いかない。したがって来年は全体的に景気が悪くなることはない」と持論を展開。また、来年に国民が学習すべきこととして「物価上昇で現金価値が低下することを十分に理解し、投資などで資金の自己防衛をすることが大切」とし、「地域活性化へ何よりも重要なのは、民間のやる気」と訴えた。