もはや巨大地震や津波に対する訓練の重要性は嫌というほど叫ばれ、だれしも理解していることだと思うが、筆者は御坊幼稚園の訓練を取材して、その思いを一層強くした。
 同園では防災教育活動の一環で毎月1回、さまざまな工夫や試行錯誤を繰り返しながら訓練を行っている。先日の訓練では、約700㍍離れた御坊小学校まで避難したが、歩くのが遅い2歳児をリヤカーに乗せて、隊列が乱れやすい年少児は1本のロープを握ってそれぞれ避難。同小学校の3階に到着したのは地震発生から15分後で、大きな被害が予想される津波襲来の27分後には間に合った。訓練中は教諭らも本番さながらに真剣な表情できびきび動き、どこかの和やかに歓談しながら避難する訓練とは大違いである。
 そんな訓練の中で毎回、園児たちが着用しているのがライフジャケット。仮に津波にのまれても浮いていれば助かる可能性があるということで、東日本大震災以降注目されている。ただ、ライフジャケット着用には、一部に「着用に時間がかかり、避難開始が遅くなる」との心配の声もある。ところが、この御坊幼稚園の訓練を見る限り全くそんなことはない。園児たちはスムーズに着て、次の避難行動に移っている。
 もちろん、船舶用のライフジャケットとは違い、簡単に着用できるように工夫はされているが、何よりも毎月1回の訓練で園児たちが着用に慣れていることが大きく、もはや一連の避難行動が体に染み付いているといった感じ。この例を一つ取っても定期的、継続的な訓練の大切さがよく分かるわけで、同園の取り組み姿勢に感心させられる。   (吉)