安倍晋三首相が1日に記者会見し、消費税率を来年4月1日に現行の5%から8%へ引き上げると表明した。すでに先月からテレビや新聞での事前報道があり、大きな驚きも感じなかったが、とにかくこれで来春から一段と地方の経済、庶民の暮らしが大変になるのは間違いないだろう。
 とりあえず消費税を3%引き上げることで、税収は年間8兆円ほど増加するそうだ。安倍首相は3%引き上げと同時に「経済再生と財政健全化は両立しうる」と述べ、増税と同時に企業向けの減税など5兆円を超える経済対策も打ち出した。8兆円入ってきて、5兆円を使うという。それなら当面1%ずつの段階的な税率引き上げなどの方が暮らしにも経済にも優しかったのではないかと、いまさらながら思ってしまう。
 大企業は減税の恩恵を受けられる可能性が少なからずあり、リストラやコストカットなどでこの増税を乗り切るのは難しくないかもしれない。ただ、中小企業は簡単にそうはいかない。安易な価格転嫁は売り上げ減少につながるのが必至。飲食業にしても製造業にしても値上げに踏み切る場合は新たな付加価値とセットにするなどの対策を考える必要があり、来年春までに難しい選択を迫られる。円安、アベノミクスの影響なんて、まだほとんど感じられない状況の中、単純に「ピンチはチャンス」といってはいられない。
 企業が値上げの際にサービス向上を図るのと同様、国には国民に負担増をお願いするのだから確かな未来が約束される政策を同時に望む。まだ2015年10月にも負担が増える。それまでには経済再生、財政健全化の両立に、安心して暮らしていける社会保障の充実という3本目の矢も加えてほしい。     (賀)