先日、みなべ町で職員が団体会計から86万6500円を着服するという不祥事が発生した。口座から現金を引き出し、飲食費や遊興費に使用していたという。公金が不正に流用された許しがたい行為といえる。
 しかし、同町で発生した不祥事は今回だけでない。平成21年には当時の住民環境課長らが汚職事件で逮捕、同年に職員が酒気帯び運転で検挙、23年には脅迫容疑で職員が逮捕されたこともあった。町村合併した16年から10年が経過するが、不祥事はあとを絶たない。その度に最高責任者である首長は「今後は再発防止に全力で取り組んでいきたい」と謝罪。今回の事件に関しても小谷芳正町長は「機会あるごとに信頼回復に努めるよう言い続けてきたが、こういった不祥事が発生してしまった」と深々と頭を下げた。
 平成21年の汚職事件発覚後は職員研修などの対策も講じたが、どうしてこれだけ不祥事が繰りかえされるのか。職員一人一人が人ごとと考えず真剣に取り組む、ということができていなかった結果だろう。今回の不祥事では「職員が通帳と印鑑を所持し、いつでも引き出せる状態であったことが問題。そこを改めなければならない」という意見が聞かれた。もちろんそれは重要なことだ。しかし、それ以前に公金に対する考えが軽かったということの方が根深い問題だ。再発防止に向けた管理システムの構築は必要。しかし、それですべてが解決できるとは到底思えない。
 孔子は論語の中で「民信なくば立たず」という言葉を残している。政治には民衆の信頼がなければ成り立たない意味だ。みなべ町にはどれだけの民信があるのか。     (雄)