二十歳前後の頃、この季節になると連日のように日高町の産湯か白浜町の白良浜に海水浴に行ったものだ。ある夏の日、友達に誘われたのだが、体調が悪かったのか泳ぐつもりもないまま白良浜へ出掛けたことがあった。砂浜で海水浴を楽しむ友達を見ていたが、波と戯れ、はしゃいでいる姿を見ていると、筆者も泳ぎたくてうずうず。水着を持っていなかったので服を着たまま海に入ったところ、一瞬ヒヤリ。服が重くて思うように動けない。身の危険を感じ、海から上がった経験がある。
 1カ月ほど前、スイミングスクールで、着衣泳講習の取材をした。水の事故の多くが服を着たままで起こることから、スクールでは海や川に落ちても慌てず対処してもらおうと毎年開催している。筆者が取材したのは、ジュニアクラスの子どもたち。Tシャツを着た状態でクロール、背泳などそれぞれの泳法で泳ぐ難しさを体験。水で服が重く、いつもと違う感覚に戸惑っていた。インストラクターによると、着衣を身につけた状態ではクロールより平泳ぎの方が適し、背面姿勢の方が呼吸をしやすいらしく、ペットボトルやランドセルなど浮力が得られるものは大きな助け船になるという。
 調べてみると、水の事故の大部分は海や河川、湖など自然の場所が大半で、プールはわずか。行為別では釣りや通行中が多く、この2項目だけで50%近くにもなる。作業中や陸上での遊戯中を含めると、着衣状態での水死は70%以上にもなり、着衣泳の経験、指導は必要だ。水に接する機会が多いこの季節。一度、指導者の下で体験しておくのに越したことはないが、着衣状態での水泳に対する知識を持っているだけでも身を守れる可能性は随分高まると思う。     (昌)