不用意な発言は自分自身に災いを招くことがある。言葉足らずの場合には、言いたいことが理解されず誤解を招くこともよくある。場合によっては自分の考えていないことが言葉で相手に伝わってしまい、後悔するケースも生じる。言葉の使い方は難しい。まさに口は災いのもとであるということだろう。
 政治や芸能界などマスコミが注目する世界では、特にこの傾向が顕著に現れる。先日も日本維新の会代表で大阪市長の橋下徹氏は会見で「当時、慰安婦制度が必要だったことは誰でもわかる」と述べ、大反響を呼んだ。世間では「橋下さんの言う通りだ」と賛成する意見もあれば、そうでない意見もある。しかし、参議院選挙の前哨戦といわれた東京都議選では、維新の会が公認した34人のうち当選はたったの2人。惨敗した要因には少なからず橋下氏の慰安婦を巡る発言が影響したのではなかろうか。しかし、発言を通じて慰安婦問題に一石を投じたのも事実。大勢の人がこの問題を考える機会になった面もある。
 政治家は批判を怖がるあまり、「遺憾だ」「検討する」などと抽象的な単語ばかりを並べる。しかし、人間は言葉でしか相手に思いを伝えることはできない。時には批判を恐れず、率直に自らの考えを伝えることも重要だ。
 今月21日は参議院選挙。「口は災いのもとになる」とばかりに、都合のよい耳ざわりのいいことだけアピールする候補者もいる。しかし、消費増税、原発問題など善悪の両面を持ち合わせた問題は総合的に考える必要性がある。そして有権者自身がそれを理解しなければならない。そうしないと、都合の悪いことにはだんまりを決めている政治家の思い通りになってしまう。
(雄)