7月1日から、本紙創刊85周年記念事業「御坊弁俳句大会」の作品を募集する。今回が第3回の開催となる。
 御坊日高の方言を表す言葉として「日高の馬はこくるほど駆くる」というのをきいたことがあるが、明治生まれだった祖父は幼い頃の筆者が駆け出すと「こくんな、こくんな」、側溝のそばなど歩く時は「落つんな、落つんな」と言っていた。「こけるな」「落ちるな」という意味である。言語学に関する講演会を取材した時、「この辺りは熊野古道があって都人が行き来したせいか、古語の上二段活用が今でも残っているのが素晴らしい。食ぶるとか、落つるとか」ときいて驚いた。実は優雅な都人の言葉だったのだ。
 学生の頃、「とごる」が和歌山弁だと知って愕然としたことがある。他府県の友人に「溶け残る」だろうと言われ「『とごる』の方が絶対感じが出る」と力説した。また、80歳の母の朝食には「おかいさん」を出しているが、これを「茶がゆ」というと何か別物のような気がする。
 世代が若くなるほど、方言を使う頻度は減っていく。全国どこへ言っても意味が通じるのはもちろん必要なことだが、方言を共通語に言い換えると、意味は同じでも気分や雰囲気が変わってしまう。歯切れよく共通語で語られるより、ゆったりと方言で話してもらう方が、気持ちが心に直接伝わることもある。
 今回の「御坊弁俳句大会」は、御坊日高で親しまれる言葉の数かずを「俳句」という世界一短い詩の形で表現し、ふるさとの言葉のよさを再発見する試み。御坊弁ならではの雰囲気を、季語を入れ17文字で詠む。難しいが、故郷の言葉や文芸に親しむと共に頭の体操にもなる。ぜひ奮ってご応募を。(里)