なにごとも、うまく続けていくには「バランス感覚」が大事。前後左右、上下からの引力、圧力を受けても転ばぬよう、ぶれぬようスタンスを決め、ゴルフの場合はその構えでボールの飛ぶ方向が変化する。野球ではセンター返しを基本に、右に左に打ち分けられる構えが高打率を残す。
 アベノミクス効果が明るい話題となっている。政権発足から半年で株価は2倍、建設業界で働く友人は「このあいだ、施主が『株で3億ほど儲けたさか』といって、建築中の建物のローンをポンと一括で払ってくれた」という。まさに「個人消費の伸び」を目の当たりにした瞬間だが、円高に振れすぎていた針がようやくバランスを修正し始めただけ、やっと正常になってきたところだという見方もある。
 世耕官房副長官は、安倍政権になって政治が安定してきたことにより、外遊先の国の反応がまるで違うという。わずか半年でそんな言葉が出ても、違和感なく聞こえるというのは、いかにこれまでの政治が不安定だったか。コーチ(政府)の指導に耳を貸さなかった日銀のスタンス、強引な引っ張り一辺倒だったアンチインフレ打法の修正から始まり、決断力と実行力、なによりもそのスピードが群を抜いている。
 歴史問題の反論は国内外から激しい反発を招く。しかし、現在の政治と国益に直結する歴史認識については、国際社会にきっちりと事実の誤りを正し、主張するのが政治家、とくに外交を担う国会議員の使命である。
 左から右へではなく、左から真ん中へ。拉致問題の交渉もしかり、他国の批判にたじろいでいては日本を取り戻せない。安倍首相は強い信念とバランス感覚をもって、着実に歩を進めてもらいたい。   (静)