みなべ町山内の千里ヶ浜から白浜町までの 「田辺南部白浜海岸県立公園」 が、 環境省から世界に誇れる美しい風景と認められ、 今後、 国立公園への格上げを目指すことが決まった。 26日には環境省と県がみなべ町の区長で構成する自治振興委員会で初めて報告し、 ことし中をめどに関係地区で説明会を開いて理解を求めていく。 来年秋の中央環境審議会に諮り、 早ければ27年3月ごろにも国立公園が誕生する。
 国立公園は現在、全国で30カ所が指定されている。今回、国立公園へ格上げを進めていくのは、田辺南部白浜海岸と、白浜町から串本町までの「熊野枯木灘」の2つの県立公園。さらに海の資源を守るため、サンゴ礁があるみなべ町沖の通称「ショウガゼ」などは新たに海域公園に指定する。すでに国立公園となっている熊野川流域から奈良県吉野にかけての「吉野熊野」と合わせて紀伊半島南部を国立公園化することで、ネームバリューによる集客アップと一層の自然保護を図るのが狙いだ。
 地域振興の一環で県が5年ほど前に環境省に話を持ちかけたのがきっかけ。その後、同省が数年かけて現地を歩いたり海に潜ったりと調査を実施。結果、「日本の景勝地を代表するとともに、世界に誇れる自然の景勝地」との評価を受け、国定公園を通り越して一気に国立公園に指定するよう取り組んでいくことになった。
 みなべ町役場で開かれた自治振興委員会では、各区長がそろう中で環境省熊野自然保護官事務所の加藤雅寛自然保護官が国立公園と県立公園の違いやメリット、デメリットなどを説明し「これから関係する各地区に出向いて住民に説明させていただき、合意を得ながら進めていきたい」と理解を求めた。加藤保護官によると、県立公園も国立公園も規制はまったく同じで、新たな制限はなく、デメリットはこれまで近くの県だった窓口が環境省になるぐらい。逆に国立公園になればこれまで以上に観光客が見込まれるほか、「国立公園で育った野菜、とれた魚」などとブランド化も図れ、観光や産業振興が期待できるという。千里ヶ浜はウミガメの産卵地で有名だが、国立公園になってもこれまで通り産卵の見学ができる。加藤保護官は「国立公園というと規制が厳しいというイメージだが、これまでと何も変わらない。住民の皆さんに理解してもらいながら実現させていきたい」、同席した県職員も「国立公園のネームバリューを生かしてPRしていきたい」と期待を込めた。
 今後はみなべ町はもちろん、田辺市や白浜町など関係する地域で住民に説明し、合意が得られれば来年秋の中央環境審議会(環境大臣の諮問機関)に諮り、国立公園としてふさわしいかどうか最終的な判断を委ねる。早ければ27年3月ごろには答申が出ることになっており、国立公園化が実現するか注目されそうだ。