南海トラフの巨大地震等の災害に備え、 日高広域消防は18日、 衛星を使って映像などを送信できる 「可搬型衛星地球局 (通称VSAT)」 を県内の消防で初めて導入した。 車と違って持ち運びでき、 土砂災害などで孤立した集落や災害で通信手段が途絶えた地域に配置し、 被害状況をリアルタイムで発信できる。 現状を把握することで素早い救助や支援につながると期待されている。
 VSAT (ブイサット) は衛星電波を送受信するアンテナやパソコン、 ハンディーカムビデオ、 電話、 ファクスなどの機材がセットになっており、 4つのジュラルミンケースに小分けし、 現地で簡単に組み立てることができる。 車で進入できないような現場に持ち込むことができるのが特徴。 県内では和歌山市消防局が装置を搭載した車を1台持っているが、 持ち運びできるタイプは広域消防だけで、 近畿では8台目となる。
 広域消防管内では平成23年9月の紀伊半島水害で日高川町が甚大な被害を受け、 みなべ町清川地区が孤立し通信手段も一時的に途絶え、 被害状況を把握するのに時間がかかった。 近い将来の発生が懸念されている南海地震等にも備えるため、 今回導入を決めた。 機材は総務省消防庁から無償貸与を受けた。
 18日には専門業者を招いて取り扱いの説明を受け、 組み立てからケーブルの接続、 映像の送り方などを勉強。 コンパクトサイズのビデオで映像を撮影すると、 同消防通信指令室のテレビに映し出されることを確認。 隊員が孤立集落に入って録画撮影した映像を送信することもでき、 連絡が取れない地域がどのような被害を受けているかを迅速に把握することができる。 何が不足しているか、 どのような支援が必要かの情報を得られれば素早い人命救助や復旧支援につなげることができるメリットがある。
 同消防の木村奬警防課長は 「情報を迅速的確に発信することが大きな役目。 台風や地震などの災害で威力を発揮できるよう、 日ごろから十分訓練を重ねておきたい」 と話している。