在日米軍の新型輸送ヘリ「オスプレイ」の飛行訓練が去る6、7、8の3日間、日高川町や印南町などの上空を通る「オレンジルート」で行われた。県によると、結局は当地方に飛んでこなかったらしいが、報道のヘリが上空を飛んだり、カメラマンが張り込みをするなどちょっとした騒ぎになっていた。
 飛行訓練については日高地方でもさまざまな反応。日高川町議会では墜落事故を起こしたオスプレイの安全性への心配から訓練自体に反対する決議を行った。さらに戦争の道具として使われる輸送機の訓練に協力したくないという点から反対する民間団体もある。一方、町村会では昨年反対決議を行った経緯があり、訓練が決定したときも「大変遺憾」との態度を表明したものの、日米安保の問題などからも「冷静に対応」と、ややトーンを下げている。
 そんな中、事実上容認する意見もある。中村裕一県議は「災害時には米軍に助けてもらうこともあり、地元で訓練をすることは有益だ」との見解を示している。確かにそれも一理あると思う。オスプレイは垂直に離陸ができて滑走路がいらず、なおかつ機体の大きさから大量の人や物資輸送が可能。安全性さえ確立されれば、将来的に本県で巨大地震が発生した際の救援に活躍する可能性があり、あらかじめ地形を理解してもらっておくことはスムーズな輸送に役立つかもしれない。
 とはいうものの、今回の訓練実施について最も問題視すべきは、事前に何の説明もなかったことだろう。もろ手を挙げて地元が賛成している状況でないのに、国の説明責任はどうなっているのか。米軍への配慮は必要かもしれないが、国民をないがしろにしてもらっては本末転倒である。(吉)