数年前、ある小学生球児を取材した。当時、学童野球のチームに所属。毎日チームの練習に参加し、帰宅後も1時間以上かけて父親の手作りゲージを使って打撃練習に打ち込んでいた。甲子園での大活躍を目の当たりにした強豪高校へ進学するのが夢であり目標にしていた。先日、その後の話を耳にしたところ、当時の小学生球児は希望の進路に進めることが決まったという。小学生のころから運動能力の高さは評価を受けていたが、それだけではなかったはず。やはりしっかりと夢を持って、一生懸命に頑張ってきたのが大きかったのだろうと感じた。
 筆者は小学生の頃、桑田、清原両選手にあこがれ、野球選手になりたかった。現実はスポーツ選手として活躍できる身体能力、それに絶対にという確固たる意志もなく、高校入学後には早くも帰宅部。ただ、野球選手になりたいという夢を持って短い期間であっても努力をしたことは、いま仕事に少しは生かされていると実感している。野球が好きでなければスポーツ担当記者を長年やってこれたかどうか分からない。時にはプロ野球選手や高校野球の強豪に取材に行く機会も与えられ、仕事のモチベーションも高めてくれている。夢は実現できなくても持つだけで大きな力。他人の言葉を借りれば、努力と同じで成功は約束されないが、成長は約束されると思う。
 自分で「こうなりたい」と思い描けなければゴールがどこか知らないままマラソンを走っているのと同じ状態。ペース配分が分からず、途中で倒れることも、力を余してゴールして後悔することもあるだろう。心機一転の春、そんなことがないように夢と目標を持って頑張っていこう。(賀)