2年前に発生した東日本大震災では、津波で大きな被害を受けた。 紀伊半島に位置する日高地方は人ごとではない。 南海トラフの大地震が懸念されているからだ。 大津波の発生も指摘されており、 東日本大震災の教訓を生かした防災対策が進められている。 しかし、 大津波の対策は逃げることぐらい。 避難できる時間がどれだけあるかが重要になる。
 みなべ町で昨年11月に行った海岸部の住民を対象とした津波避難訓練で、 避難者の43%が10分以上を要した。 県のシミュレーションによると、 南海トラフの巨大地震が発生した場合の津波の到達時間は日高地方で最も早くて14分だという。 数字だけで考えると、 10分以内というのは安全に避難できるぎりぎりの時間。訓練では15分以上かかったという住民は21%で、津波が到着した時に避難の途中だったことになる。
 実際は地震が発生した時に家の中にいるのか、仕事中なのかなどによって避難時間は大きく変わる。 数字だけで一概に判断できないが、 災害想定の基準として考えることは大切だ。 例えば家の中にいたとしても地震の揺れが収まり、 実際に避難を始めるまで数分はかかり、 思っている以上に時間は早く経過してしまう。
 14分という少ない避難時間を少しでもムダにすることはできない。 しかし、 地震の揺れでタンスなどが転倒して負傷したり、 入り口をふさいだりすると致命的なロスタイムが出る。 そのために今すぐにできるのは家具の固定だが、 県によると東日本大震災後の平成23年夏に行った県民意識調査では6割が家具の固定を行っていないという。 まずは素早く避難できる環境づくりが大切だ。    (雄)