紅白歌合戦で感動を呼んだ美輪明宏の『ヨイトマケの唄』。高度成長時代の社会の一面を切り取った詞が、昭和を生きた人たちの胸に響く。子どものために必死で働く母親、友達にはその姿を見られたくないのだが、毎日が精いっぱいの母親はそこまで気が回らない。マザコンを自称するリリー・フランキーやビートたけしにも通じる哀しくも優しい親子愛。音楽ではカバーも後を絶たない。
 年が明けて3日、仕事で日高高校卒業生の同窓会にお邪魔した。平成5年度の卒業からことしで19年目、ちょっと中途半端といえばそうなのだが、懐かしい同級生との再会に、そんなことはどうでもよい。会場のあちこちで思い出話の花が咲き、笑顔いっぱいの中での仕事始めとなった。
 30代後半、いわゆるアラフォー世代の皆さんは、家庭でも仕事でも、地域でも、それなりに責任ある立場となり、何かとストレスの多い毎日と想像する。子どものころ、身を粉にして自分に愛情を注いでくれた親は年老い、いまは自分が家族のために歯を食いしばって頑張っておられることだろう。今回の同窓会でそんな仲間と酒を酌み交わし、力をもらった方も多いのでは。
 ♪苦労苦労で死んでった 母ちゃん見てくれこの姿...。貧しさや親の子に対する一心な愛は、子どもにとっては恥ずかしく、ときに「いじめ」の原因にもなってしまうが、自慢でもないかわりに恥でもない。美輪明宏が友達のことを思ってつくったというこの曲を聴くたび、小学校のころの友達を思い出す。
 音信不通でどこにいるかもわからないM君。子どもの友達に笑われるほど、家族のために頑張っている姿が目に浮かぶ。   (静)