民間災害ボランティア団体「紀州梅の郷救助隊」(尾﨑剛通隊長)は22日、東日本大震災で甚大な津波被害を受けた宮城県気仙沼市の仮設住宅などへ日高川町の特産ミカンを発送した。昨年、日高川の水害で被災した農家が協力。救助隊からは「今後もこのつながりを大切にしたい」、農家からは「ほんの数日ですが不自由な生活を経験し、東北の被災地のことを思わずにいられない」などのメッセージも添えられ、被災地の人たちを勇気づける、心温まるクリスマスプレゼントになりそうだ。
 送り先は、 いまなお気仙沼市の野球場や中学校に設置されている仮設住宅で暮らす24世帯。 5㌔入りの温州ミカンをそれぞれ1、 2箱ずつ、 計25箱をクリスマスに着くよう22日に発送した。 尾﨑隊長によると、 震災直後の昨年4月中旬に行方不明者の捜索や炊き出しなどの活動で現地を訪問したり同年8月の夏祭りの運営に被災地を訪れた際に知り合った人たちで、 クリスマス、 年末を少しでもリラックスして過ごしてもらおうと和歌山の特産品を支援品に選んだ。
 東日本大震災から1年9カ月余り。 遠く離れた和歌山の住民には、 復興が着々と進んでいるという思いを持つ人も増えてきている。 尾﨑隊長も 「そろそろ次の災害に備える時期だろうか」 と考え始めていたが、 みなべ町消防団の視察で先月下旬に再び現地を訪れると、 「復興なんてまだまだ。 がれきの処理が終わっただけ。 仮設住宅に暮らす人たちもたくさんいる」 とあらためて支援継続の必要性を痛感した。 「年1、 2回、 細々と、 便りを交換し合うだけでも支援していきたい」。 和歌山が水害に見舞われた際に心配してすぐに電話をくれた人たちのことを放ってはおけず、 ミカンには 「今後もこのつながりを大切にしたいと思っていますので、 何かありましたら連絡してください」 と手紙に記して添えた。
 ミカンのプレゼントは、 尾﨑隊長の娘夫婦で救助隊隊員にもなっている松井利郎さん (36)、 有紀子さん (32) らが経営する日高川町松瀬の 「まるまつ農園」 が協力した。 まるまつ農園は昨年9月の日高川の氾濫でハウス4棟が全壊、 農機具を保管していた倉庫も水没する被害に遭った。 水害から1年3カ月余り、 ほぼ元通りの生活を取り戻しつつあり、 水没したハウスの中で奇跡的に無事だった100本弱のデコポンも年明けには初収穫できるようになったという。 ここ4年ほどは 「阪神淡路大震災1・17のつどい」 にもミカンを提供しており、 今回も支援を快諾。 ミカンの箱に入れた手紙には 「救助隊の仲間、 またさまざまな方々に助けてもらい、 復旧、 復興へと向かっております。 幸い、 山のミカン畑は被災を免れたので収穫を迎えることができました」 と記した上で 「ほんの数日ですが、 電気と水道が止まった不自由な生活を経験し、 想像だけでは及ばない、 東北の被災地のことを思わずにはいられませんでした」 「まだこれからが冬本番ですので、 お体に気をつけてお過ごしください」 と激励の言葉を添えた。
 ミカンは順調にいけば、 クリスマスイブの24日までには到着する。 「甘くておいしい」 特産物は、 現地の人たちを勇気、 元気づけるのに一役買いそうだ。