「役場職員を防災のスペシャリストとして育成してほしい」。先日、みなべ町で行われた津波避難訓練に参加したある住民から出た意見だ。防災担当の職員はいるし、当然知識を持っているが、数年経てば異動で部署がかわってしまうことを憂いての言葉。どこのまちにも当てはまることで、住民に防災対策を指導して回る、地域の課題を洗い出して指摘する、そんな専門官が常にいれば確かに心強い。「住民の意識高揚を図っていく」とはよく聴く言葉だが、実際にどのような仕掛けをしているのか、あまり見えないのが現状ではないだろうか。防災スペシャリストに、ぜひ取り組んでほしい。
 とくに必要なのは子どもへの防災教育だ。南海トラフの巨大地震、10㍍を超える津波、避難経路などなど、大人でも十分な理解や想像が難しいことを、学生、とりわけ小学生に分かってもらうのは簡単ではない。想定されている津波が襲ってきたら、「通学路の○○商店の屋根まで水に浸かる」など子どもがイメージできる地域の実状にあった教育が必要だろう。そういう指導ができるスペシャリストを育成し、学校や地域を巡回する職員がいれば、まちの防災力が上がっていくことは間違いない。
 1946年12月21日午前4時19分ごろ、マグニチュード8・0といわれる昭和南海地震が発生。もうすぐ66年になる。南海地震が近い将来発生するといわれ出して、もう10年ほど経つだろうか。そのときは、着実に近づいている。どうすればいいか、いくら考えても100%の答えはない。スペシャリストが確実に減災につながるかは、やってみなければ分からない。だからこそ、いま、できることをやるしかない。
       (片)