日高川町鐘巻、 道成寺所蔵の南北朝時代の制作とされていた「木造釈迦如来坐像」 が、実は本体は鎌倉時代(12~14世紀)、両手首だけが奈良時代 (8世紀) の制作だったことが分かった。 公益財団法人県文化財センターが調査し、 20日に発表した。 木の年輪幅から年代を調べる 「年輪年代測定」 でヒノキ製の両手首を測定した結果判明。手だけが約600年も遡る驚きの調査結果となった。
 釈迦如来坐像は県指定文化財で、 大きさは2・26㍍。 宝仏殿に安置されており、 手や腕などははめ込む構造になっている。 調査は、 年輪年代測定の第一人者で奈良文化財研究所の光谷拓実客員研究員に同センターが依頼。 両手を測定したところ、 左手首が721年以降、 右手首が722年以降に伐採された同じヒノキ材で作られていたことが判明。 本体も南北朝ではなく鎌倉時代の制作であることが分かった。 この結果を受けて、 仏像に詳しい大阪経済大学の長田寛康教授が手首の造形や制作様式・技法を調べた結果、 年輪年代測定同様に奈良時代制作との見解を出した。
 寺には釈迦如来坐像についている両手とは別に、 展示ケースにもう一組の両手を保管。 予備と考えられていたが、 年輪年代測定で鎌倉時代の制作ということも分かった。 このことから、 展示ケースの両手がもともと釈迦如来坐像についていた手と判明した。
 専門家らは奈良時代制作の両手は、 すでにこの頃から存在していた釈迦如来坐像のものであると指摘。 鎌倉時代に釈迦如来坐像を新たに制作し、 南北朝時代の道成寺大改修の際に古い両手が見つかり、 取り換えたのではないかと推測している。 なぜ奈良時代の釈迦如来坐像は本体がなくなり、 両手だけが残ったのかは謎だが、 「本体より手首が古いという話は聞いたことがない。 寺創建当初の元の仏像のものを残したい、 伝統を後世に伝えたいとの思いがあったのではないか」 と推測している。 小野俊成住職は「新たな寺の一面を明らかにしていただき、 ありがたい限り。 創建当初の仏像の一部だったことがわかり、 とてもうれしく感激しています」 と話している。