阪神大震災で犠牲になった6434人のうち、災害急性期といわれる48時間以内に適切な救急搬送・医療を受けることができていれば、約500人が助かった可能性があったといわれている。どの患者をどの病院に搬送するのか、1分1秒を争う中で、治療の優先順位をつけるトリアージがどれだけ的確に実践できるのか。この課題に早くから取り組んでいるのが、御坊保健所を中心とする御坊医療圏の関係機関である。8年前からスタートした大規模災害を想定したトリアージ訓練は、ことしも11月3日に実施される。
 先日、訓練の事前研修として、救命医療チームDMATの一員として東日本大震災被災地に出動した和医大の岩崎安博助教を招いて講演会が開かれた。体験をもとに岩崎助教は、大多数のケガ人に加え、冬の津波被害では低体温症や脱水症状の患者が多くなるだろうといわれていた。治療の優先順位を分類しても、あふれる患者をどこに搬送するのか。日高地方の拠点病院となる日高病院も津波被害を受ける可能性がある。浸水や路面決壊があれば陸路での搬送は不可能だ。そんな状況の中で何ができるのか。課題は山積している。
 トリアージは、現場の最前線で活躍する救急隊らのレベルアップに重要な訓練だが、加えて今後は、搬送方法に重点を置いた取り組みも必要だろう。津波被害が広範囲になればなるほど、ヘリを中心とした空路が重要になる。最も機動力があって多くの人員を運ぶ能力を持っている自衛隊との連携が重要。スムーズな搬送のために、ぜひ訓練に取り入れてもらいたい。11月5日は津波防災の日。住民もあらためて自分たちの置かれている立場を考えよう。     (片)