内閣府の南海トラフの巨大地震モデル検討会が公表した新たな津波高・浸水域等の推計結果で、和歌山県内の最大津波高は20㍍、沿岸18市町のうち11市町でことし3月の前回推計値より大きくなった。前回数値との違いは地形の計算単位が小さくなり、より微細な地形変化が正確に反映されたためで、日高地方は御坊市、日高町など4市町が前回より小さくなったものの、美浜町と由良町は若干上昇。また、南海トラフの巨大地震対策検討ワーキンググループ(WG)が初めて公表した県内全体の死者数の想定は最悪のケースで8万人とされ、従来の県の被害想定の16倍という驚愕の数字となった。
 内閣府の南海トラフの巨大地震モデル検討会は、科学的知見に基づき、想定すべき最大クラスの地震・津波の検討を行い、ことし3月に津波高と震度分布の推計結果を公表。今回はモデル検討会が前回と同じ地震の規模(マグニチュード9・0)でさらにきめ細かな10㍍メッシュの計算単位(前回は50㍍メッシュ)の再検討を行い、2度目となる津波高と震度分布のほか、津波到達時間と想定浸水区域の推計結果を初めて公表した。また、モデル検討会の公表に合わせ、国の中央防災会議の南海トラフ巨大地震対策検討WGも人的、物的な被害想定を公表した。
 モデル検討会が公表した最大津波高は、全国で最も津波高が大きいのは高知県で34㍍。次いで静岡県(33㍍)、東京都(伊豆諸島など島嶼部で31㍍)と続き、和歌山県は20㍍で8番目。和歌山県沿岸部(18市町)で最も大きな津波が押し寄せるのはすさみ町で、前回の18・3㍍より1・7㍍上昇。全体では和歌山、湯浅、広川、美浜、由良、白浜、すさみ、那智勝浦、太地、串本、新宮の11市町で前回より津波高が上がり、海南、有田、御坊、日高、印南、みなべ、田辺の7市町が小さくなった。県内30市町村の最大震度の推計結果は前回とまったく同じで、和歌山、有田、田辺、新宮など20市町で震度7(日高地方は7市町すべてで震度7)。
 モデル検討会の津波浸水面積推計結果をみると、県内でまちの面積に占める浸水面積が最も大きいのは、美浜で45・3%。次いで御坊(23・7%)、太地(20・1%)、和歌山(11・7%)と続く。津波到達時間は串本が最も早く、10㍍の津波高で4分。県の想定(第1波最大津波)の6分より2分早くなった。日高地方は御坊が26分(津波高10㍍)で県想定より2分遅く、美浜町は29分(同)で同じ。日高町は27分(津波高5㍍)、由良町は34分(同)でともに2分早くなり、印南町は25分(津波高10㍍)で2分遅く、みなべ町も25分(同)で3分遅く
なった。
 中央防災会議の対策検討WGの被害想定では、和歌山県の地震や津波による人的被害(死者数)は最大で約8万人になるとみられ、これは従来の県の想定の5008人と比べて16倍。地震の発生パターンは「冬の深夜」「冬の午後6時」「夏の正午」の3種類あり、今回の推計では死者数が多いのは冬深夜、冬夕方、夏昼の順で、それぞれ約8万人、約7万人、約6万7000人となっている。
 この人的被害の推計値は早期の避難者比率が高く、津波情報の伝達や避難の呼びかけが効果的に行われれば大幅に減少し、冬深夜の総死者数8万人は5万人、冬夕方の7万人は3万人、夏昼の6万7000人は2万7000人まで減ると予想。全体の死者数のうち最も比率が高い津波による死者は、冬深夜が7万2000人から4万2000人、冬夕方が6万3000人から2万3000人、夏昼が6万3000人から2万3000人になるとされている。