祭りの獅子頭も製作する市内薗(椿)のタイル業杉本卓治さん(45)がガレージに保管している獅子頭の材料の中から、約140年前の明治時代の小学校の教科書が見つかった。
 獅子頭は粘り強く破れにくい明治、大正時代の和紙を張り合わせて製作。杉本さんが獅子頭の材料として、知人らから集めて保管していた古文書などを整理していたところ、ざっと100冊以上の明治期の教科書が出てきた。
 教科書には「和歌山縣日高郡」などの朱印があり、日高地方の学校で使われていたとみられ、139年前の明治6年発行の教科書には「藤園小学校」の判が押されたものも。藤園小学校は現在の御坊小学校の設立当時の名称で、杉本さんは「明治6年6月に日高別院に創立された御坊小学校の初代の教科書に間違いない」という。
 昔の和紙は現在の和紙に比べて破れにくく、インクとは違う膠(にかわ)が混じる墨の字が書かれた古文書などはより強度が高く、獅子頭を作るうえでうってつけの材料だが、杉本さんは「これだけ多くの保存状態のいい教科書は貴重なものですし、学校関係者や興味のある人に見てもらえれば」と、獅子頭に張るのはいったん止めて、調査や展示を希望する人がいれば協力する考え。「低学年の算術(算数)の教科書は、『2÷1=2』という読み方も『二を、一にて割れば、二』というふうに、現在とは違って面白い。子どもたちにも手にとって見てほしいですね」と話している。