巨大地震の被害想定や対策を検討している国の中央防災会議は19日、 中間報告で沿岸地域の住宅や公共施設などの津波対策として 「高台移転」 の必要性を提言したが、 日高地方の沿岸市町では 「一体どうしろというのか」 と対応に困惑している。 ネックは集団移転にかかる莫大な費用で、 さらに市や美浜町は高台がほとんどなく、 担当者らは 「現実問題として難しい」 と頭を抱えている。
 全国的に津波対策として高台移転についてはかねて必要性が訴えられており、 今回国の防災対策を提言する中央防災会議も中間報告で高台移転を盛り込んだ。しかし、現行で住宅や役所、学校、高齢者施設など移転する場合の予算について国や県から補助金を出すような制度はなく、 同会議も「制度創設をすべき」 という踏み込んだ提言まではしていない。
 こういった動きに対して市は 「検討はしなければならない。 例えば高台にある熊野工業団地を住宅用にする方法もある。 新築住宅については津波が予想される地域に建築できないという法律や条例で縛りをかけられるのかどうか検討する余地もある。 また、 市庁舎は改築の際にいまの場所を高くするという案も出ているなど、 いろいろ考えられることはある」 としながらも、 「しかし問題は予算。 とても単独の自治体でできるような額ではないし、国や県の補助金がなければ進む話ではない」 と困惑。 さらに 「熊野工業団地を住宅用にしても面積的に沿岸地域の住宅が全部引っ越しできるほどの広さは到底ない」 と話している。
 美浜町は 「東日本の被災地ではすでに高台移転が進められている。 ただ、 それは家屋が倒壊してしまった状態で別の場所に新築するという話で、 例えば浸水が予想される浜ノ瀬や田井畑などで、 住民が住み慣れた既設住宅を取り壊して、 新しい場所に移転するという気持ちになれるのだろうか。 住民の合意形成からいっても無理ではないか」 などと、 現段階での対応の難しさを指摘している。
 このほかの沿岸町も同じような考えだが、 庁舎の高台移転計画保留で国から6億円の補助金がなくなってしまった印南町は、「今回の提言で国が高台移転に新たな支援策を講じてくれるのではないか」と期待する面もある。