「天災は忘れたころにやってくる」とは、恐ろしさを忘れたころにまた起こる、日ごろの用心を怠ってはならないという戒めでもある。何も天災に限ったことではない、犯罪に置き換えても同じことがいえる。これまで被害にあったことがないから、これからも大丈夫だろうとの油断が最も危ない。鍵をかけ忘れたほんの数分の間に車内から貴重品が盗まれる、自転車を持っていかれる、こんなことは日常茶飯事。よからぬことを考えている輩は、人の隙を狙っているのである。
 2、3年前に全国的に多発したオレオレ詐欺など、いわゆる振り込め詐欺がここ数カ月前から再び頻繁に起こるようになった。県内では10月だけで11件の被害があり、今月に入っても起こっている。被害者の多くは一人暮らしや高齢者の方々。弱者を狙う卑劣極まりない犯行は決して許されないが、被害に遭わないためには本人がだまされていることに気づくかどうかにかかっている点が、この手の犯罪を防ぐ難しいところ。耳にたこができるくらい地道に呼びかけたかいがあって、以前流行したときは被害が減ったが、もうなくなっただろうと油断すると、このありさま。忘れたころにやってくる、に見事に陥ってしまったといえる。
 データによると、関東は息子などになりすまして現金を振り込ませるオレオレ詐欺、関西は「保険金が戻ってくる」とだます還付金詐欺が多いという。地域性が表れているといえるだろう。中にはどれだけ説明しても、保険金が戻ってくると信じ、振り込みをやめさせようとする人に逆ギレするケースもあるという。忘れたころに還付金が戻ってくる、こんなうまい話に気をつけろ。     (片)