日ごろ薬を服用していないので、もし大規模な災害が発生したとき、どのように調達すればいいのかなどこれまで考えたことがなかった。しかし、当事者にとっては大きな問題。毎日欠かさず飲まなければならない人はたくさんいる。東日本大震災では、かかりつけの病院が被災し、カルテが流出して、だれにどの薬を出していたかの記録がなくなってしまったというケースは少なくなかったという。ライフラインが途絶え、欲しい薬を手に入れられない人もたくさんいた。このような現状を踏まえ、これから南海地震に備えなければならないわれわれはどのような準備ができるのだろうか。
 先日、御坊保健所でこの問題について検討する初めての会議が開かれた。そこでは日高地方で起こるだろうさまざまな課題が浮き彫りになった。多くの薬局や公共施設が津波の浸水シミュレーション区域内に建っていること、医薬分業率は県内最低の20%台、由良町には薬局がないなど、いざというときスムーズな薬の処方が困難な現状が明らかになった。東海・東南海・南海の三連動地震となれば、被害は非常に広域になり、そうなれば医薬品調達の遅れはさらに深刻になるだろう。
 巨大地震に襲われたあとの大混乱の中で、誰がどのような薬を必要としているのか、あらかじめ把握しておかなければ分からない。これは医療や医薬品関係者だけの問題にするのではなく、役場や社会福祉協議会が積極的にかかわっていくべきことだと感じる。両者が窓口となって、あらかじめ服薬歴を登録してもらい、毎月更新していくというのも一つの手法だろう。幾重にも対応策を講じておくことが、備えというものだ。       (片)