人類最古とされる不老不死の話は紀元前2000年頃につくられたメソポタミアの「ギルガメッシュ叙事詩」に出てきたそうだ。古代エジプトでは遺体をミイラにして死後の再生を願い、秦の始皇帝は不老不死の霊薬を求め、日本にやって来たとされる。西洋では人の血で永遠の命を持つヴァンパイアの伝承、日本でも人魚の肉を食べて800歳まで生きた八百比丘尼(やおびくに)の物語なども伝わる。

 仏教の教えでもある、人が何度も生死を繰り返す輪廻転生とはまた違う不老不死。自分の記憶や経験を持ったまま、過去からずっと先の未来まで、宇宙の歴史の変遷や人類の進化、科学技術の進歩をこの目で見ることができる。いまから数世紀もすれば宇宙で暮らすような環境になっているかもしれないし、人と人の会話は念力、ドラえもんのどこでもドアのような瞬間移動の装置もあるかもしれず、未来への憧れは大きい。映画「永遠(とわ)に美しく」ではないが、近年はアンチエイジングで男女限らず若さを保つための運動や食生活、化粧品、薬なども注目されている。

 実は夢の不老不死が、現実に近付いている。アメリカのベンチャー企業が、iPS細胞を使って薬を開発しており、ヒトの皮膚を移植したマウス実験では肌質の改善に成功。日本の企業も出資しており、来年には人の臨床実験も行うそうだ。

 とはいうものの、長く生きるのとはまた違い、永遠に生きることが本当に幸せなのかどうか。顔に刻まれたしわ一つにしても、その人の歩みの証、自然な美しさを表すものであり、限られた命であるからこそ、大切にいまを一生懸命、生きるのかもしれない。(吉)