特許証を手に林谷さん

 自動車メーカーのマツダが開発を加速させ注目を集めているロータリーエンジン(RE)に関し、昨年夏に大阪から由良町門前へ移住した林谷馨さん(78)が新たな特許を取得した。サブロータリーを連結することで燃費の向上などを図る方法で、高校時代から考え続けて約60年、二度目の特許を取得した。

 REとは自動車のエンジンの種類で、一般的なピストンを往復させるレシプロエンジンと違い、回転運動をそのまま動力としている。軽量でコンパクト、低振動、低騒音、排気量に対し高出力などのメリットがあるが、燃費が悪いなどのデメリットがあるといわれている。1960年にドイツのNSU・バンケル社が技術発表し、以降多くの自動車メーカーが取り組んだ。67年に東洋工業株式会社(現マツダ株式会社)が世界で初めて量産RE搭載車を発売し、その後も唯一生産を進めていたが、2012年を最後に終了。マツダは昨年、REを搭載したPHEV(プラグインハイブリッド)車を発売し、ことし1月にはREの開発グループの立ち上げを発表した。

 林谷さんはマツダ本社がある広島県出身で、高校時代にマツダのREが話題になった際、新聞に乗っていた図面を見て、三角形が移動しながら回転する仕組みに違和感を持ったと言い、「移動することなくその場で回転する仕組みがあるはず」と考え始めた。

 その後、大阪に出て花屋や不動産業などを営む傍ら考えを巡らせ、1995年、三角形を円形にし、円の中心に向かって出入りする3本の羽根を取り付ける方法を考案して特許を取得した。自動車メーカーに持ち込んだが、RE特有の摩耗が解消できないことなどから採用はされなかった。今回の二度目の特許では、前回取得したREの方法を基に、排熱を同じ形をした別のサブロータリーに流すことで運動エネルギーを効率的に使って、燃費を向上させる方法を考案。摩耗についてはすでにある技術を使って克服したという。

 林谷さんは「この特許ではメインロータリー部分の回転と、排気ガスで回転するサブロータリーのエネルギーにより、燃費の飛躍的な向上と排気ガスの静粛性向上を同時に達成できる」と自信を見せ、今後、自動車メーカーなどでの採用に期待。また、移住先を探す中で見つけた由良町の「地域活性化にもつなげたい」と意欲を見せている。