「弱者男性」という言葉を知っているだろうか。ネットでその定義を調べると、経済的に困窮している▽パートナーが居ない▽コミュニケーション能力が低い▽発達障害や精神障害の傾向がある―などの要素を持った男性のことで、近年SNSなどで頻繁に目にする。そして、そこでは明らかに哀れみの対象として扱われることが多い。

 この国は資本主義の競争社会。競争に勝てた人は人生というステージを大きく輝かせることができる。しかし、競争に敗れたり、競争に参加しないと簡単に弾かれ、ステージにすら立たせてくれない。その原因を努力不足や自己責任という言葉であっさり片付けられるのは腑に落ちない。それぞれ生きる時代や環境などが違うからだ。

 弱者男性に関する情報はネット上にあふれる。ある弱者男性は、就職氷河期世代の40代男性。就職できても過剰労働やパワハラなどで思うように続かず、転々としているうち落ちぶれてしまい、実家にひきこもってしまった。若い頃は挽回できると希望もあったが、中年となった今は「水面に上がろうとしても上がれない。呼吸困難になって身動きがとれなくなってしまっている感覚に陥っている」と嘆いていた。

 最近になって「自分らしい生き方」「多様な選択肢」とかがフィーチャーされているが、心の底では自分より恵まれている人を羨み、恵まれていない人を見て安心するのが実際のところ。そんな人間の本音の部分を社会問題として上手く表したのが弱者男性なのかもしれない。
 現在進行形で格差がどんどん進む世の中。数年後にはまた新たな言葉が生まれるに違いない。(鞘)