廃線となっている日高川駅近くに残る橋梁

 「日本一短いローカル私鉄」として知られる紀州鉄道の全路線3・4㌔(西御坊駅―日高川駅の廃線区間0・7㌔含む)が、公益社団法人土木学会の2023年度推奨土木遺産に認定された。レールの基礎を支える路盤など、1931年の開業から92年が過ぎた設備がいまも現役で使用されていることや、廃線部分にも軌条が残存していることが歴史的建造物の価値があると評価された。

 土木学会は1914年に設立され、建設業や研究機関などの土木関係者約4万人の会員が所属する。土木遺産は歴史的土木構造物の保存に資することを目的として、2000年に創設。毎年、全国で20件程度を認定し、これまで橋梁やトンネル、ダムなど416件が選ばれている。今年度は21件が選ばれ、紀州鉄道は県内で唯一の認定となった。ほか県内の土木遺産は、南海電鉄本線の紀ノ川橋梁(和歌山市)や友ヶ島砲台群(同)など。

 紀州鉄道は1928年会社設立。今年12月に95周年を迎える。路線は31年に御坊―御坊町駅(現在の紀伊御坊駅)間が開業、翌年の32年に紀伊御坊―松原口駅(現在の西御坊駅)、34年に西御坊―日高川駅間が開業した。

 開業当初の設備は、レールの土台にあたる盛り土や交通荷重を分散させる路盤のほか、御坊保健所近くの湯川第4橋梁の橋脚や橋げた、日高川駅の橋梁やホームなどが残る。レール部分は架け替えが進められ、最も古いものは63年製。枕木も乗客の安全確保のため、木製からコンクリート製への転換が進められており、現存する木の枕木は学門―紀伊御坊駅間の約290㍍、御坊駅から湯川第2踏切までの約400㍍があるが、それぞれ25年、26年にはコンクリート製に付け替える予定となっている。

 認定を受け紀州鉄道の担当者は「今までの先人の努力が認められうれしく思います。これからも乗客の安全を第一にしながら、貴重な遺産を後世につないでいきたい」と話している。