たまにスーパーに買い物に出かけると、物価の上昇にびっくりすることがある。たまごはちょっと前までは1パック100円程度で買えたが、今は2倍以上。秋の味覚で言えば、日本産のマツタケは庶民の手が届かない範囲まで高騰してスーパーから消えたし、サンマも昨年以上の高値。ウナギの価格にも驚いてしまう。十数年前までは1匹で1000円程度だったような記憶があるが、最近では2倍程度に跳ね上がった。

 市場で販売されるウナギは天然が出回ることは少なく、大半はシラスウナギという稚魚を養殖して出荷される。そのシラスウナギの漁獲量が乱獲や生育環境の変化で大きく減少しているという。お年寄りらに話を聞くと、昔はウナギがたくさんあり、ウナギを獲る筒を川に仕掛けると、何匹も入ったという話を聞くが、ニホンウナギ自体が絶滅危惧種に指定された。

 先日、近畿大学がウナギの完全養殖に成功したと発表した。2010年に国立研究開発法人水産研究・教育機構が世界で初めて成功したが、大学としては初の成果。「完全養殖に成功した」というニュースを聞いただけで、すぐに「ウナギが安く食べられる」と思ってしまいがちだが、そうではないらしい。現状では特殊な小規模水槽でのみ飼育が可能で、シラスウナギを大量生産する技術はないという。

 同大学は2002年にクロマグロの完全養殖に成功し、今では出荷にまでこぎつけている。将来的にはマグロに続いて完全養殖のウナギも出荷できる日が来ることだろう。研究者たちの知恵と努力で一刻も早く庶民の願いを叶えてくれることを期待したい。(雄)