図書館のカウンターに設置された特集コーナー

 9月の「世界アルツハイマー月間」、21日の「世界アルツハイマーデー」に合わせて美浜町は30日まで、「〝いつか〟を今考える~図書館で知る認知症特集」として、図書館に関連図書のコーナーを設置している。症状の進行を抑えることが期待されるアルツハイマー病の新薬の承認が、厚生労働省の専門家部会で了承されるなか、身近な病気とされる認知症に関心を持つきっかけにし、正しい理解につなげてもらう。

 アルツハイマー病は認知症の原因となる病気の一つ。日本では認知症と診断された高齢者の6割以上を占めている。厚生労働省の推計では国内での認知症の人は2020年時点で600万人。さらに団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となる2025年には約700万人に上ると予測されており、認知症高齢者の数は約5人に1人に達すると見込まれている。

 美浜町は、アルツハイマー月間・デーに合わせ、認知症について図書を通じて興味を持ってもらおうと、かがやく長寿課と教育課が連携。蔵書に新しく購入した本を加え、図書館のカウンターに特集コーナーを設置した。

 コーナーには病気や予防、本人の体験記から絵本、小説まで約40冊を展示。医療機関や県のパンフレットを並べている。

 話題になっているアルツハイマー病の新しい治療薬は、日本とアメリカの製薬会社が共同開発。アルツハイマー病の患者の脳にたまる「アミロイドβ」という異常なたんぱく質を取り除くことで、症状の進行を抑えることが期待されている一方、早期診断や価格が課題となっている。

 同町で認知症について担当する地域包括支援センター、社会福祉士の梶原深心さん(46)は新薬について「他の薬と比べてどうか分かりませんが、研究が進むのはいいこと」と歓迎。「ならない」「なるのを遅らせる」「なっても進行を遅らせる」の「予防」と、認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らせるようにする「共生」が国の施策の柱とし、「薬も含めて正しい理解が重要です。認知症は身近な病気とされており、予防と意思決定ができなくなったときの備え、早期発見が大切。自分ごととして捉えてもらい、地域ぐるみで理解が進むよう、興味のある角度から本を手に取り、それをきっかけに少しでも関心を持ってもらえれば」と話している。