中村氏の資料を紹介する小田さん

 由良町の九条の会ゆらは3日、町中央公民館で第16回戦争体験と平和への思いを語り継ぐ会を開き、事務局の小田憲さんが故中村隆一郎氏の資料から日高大空襲の被害や犠牲者の声などを紹介した。

 中村氏は由良町横浜で育ち、高校の社会科教師として長年教壇に立ち、生徒とともに日高地方の空襲体験の掘り起こしを行い、その記録を冊子や本に残している。

 小田さんは本の内容をスクリーンに映し、中村氏が集めた証言を紹介。美浜町浜ノ瀬の空襲では、当時御坊商業学校の学生の証言で、「松林付近で爆弾を投下され、『バラバラッ』『ドスンドスン』という大音響と地響きが起こった。とっさに海の方に走ったが砂が焼けるように熱く、そしてそこには一緒にいた4人の仲間が目も当てられない状態で即死していた。自分は怪我だけですみ、30㌢ほどの盛砂が生死の分かれとなった」と読み上げた。

 資料には亡くなった4人の人柄などが詳細に記録されていることも紹介し、「そのうちの1人はアイドルのような人気者で、被爆直後に医師の父が駆けつけたが、一目で『だめだ』とつぶやいたそうです」などと空襲直後の人々の様子を生々しく話した。

 第2部では浜ノ瀬の空襲で亡くなった女子児童について、由良早苗さんが朗読した。