いざというときに備え避難ルートを点検する印南町の職員ら(印南浜地区で)

 東日本大震災の発生から12年を迎えた11日、印南町では、若手職員を対象にした防災研修、各地区の自主防災会による海抜表示板の掛け替え作業などが行われた。地震の揺れと津波から身を守り、1人の犠牲者も出さないためには何が必要か。12年前は小学生だった職員、地域の防災リーダーに話を聞いた。

 町職員の防災研修は、2020年度以降採用された職員12人が4班に分かれ、印南・切目各地区の避難路や避難場所を回り、案内板や誘導灯の点検・清掃を行った。印南の浜地区では、印南小学校裏の避難階段にある手すり照明を清掃、ソーラー式避難誘導灯周辺の草を刈りとったりした。

 参加した職員は12年前に小中学生だった人も多く、当時小学6年生だった総務課の小池利哉さん(24)は「東日本大震災は子どもながら衝撃を受けたことを覚えています。今は防災担当の町職員として、災害時に1人も犠牲者を出さないよう、日ごろから意識を持って仕事に向き合っていきたいです」と話した。
 自主防災会では、経年劣化により文字が見えづらくなった海抜表示板の掛け替えを18の組織でそれぞれ実施した。浜地区では9カ所の表示板を交換し、いざという時に備えた。

 想定されている南海トラフ巨大地震に備え、町や自主防災会では防災意識を高めるさまざまな取り組みを行っているが、その中で課題もある。浜地区の防災会会長で、町の自主防災会連絡協議会の会長も務める濵中芳光さん(69)は、「被災地のニュースを見れば意識は高まるが、日常の中で危機感は次第に薄らいでいく」と指摘する。自主防災会では毎年11月5日の世界津波の日に合わせて避難訓練を実施しているが、参加者が毎年同じ顔ぶれで人数も少なくなってきているという。訓練の参加は個人の意思によるものとしたうえで「1人でも多くの住民が参加してもらえるようになれば」と訴えている。 

 今後の取り組みとして、避難生活にも焦点を当てた企画も行いたいと考えている。濵中さんは「避難所へ逃げることも大切だが、避難生活の方が長く負担を強いられる。語り部を招いて体験談を聞き、地域の防災力に生かしていきたい」と話す。

 県が想定している南海トラフ巨大地震の規模は、マグニチュード9・1、最大津波高は8~19㍍、死者数は約9万人となっている。