美浜町の和歌山病院前でアピールする参加者

 深刻な人手不足解消や賃金アップを求め、独立行政法人国立病院機構(本部・東京)が運営する病院で働く職員らでつくる全日本国立医療労働組合(全医労)は9日、全国137病院で一斉にストライキを実施。県内では美浜町の和歌山病院でも行われ、「だれもが安心して医療を受けられるよう、国立病院の機能強化を」と主張。同病院のストは31年ぶりで、プラカードや横断幕を持ち、声を出さないサイレントアピールを展開した。

 国立病院機構は全国で約140の病院を運営。全医労は賃金労働条件の改善を求めて昨年11月から機構本部と3度交渉を重ね、今月8日には4度目の交渉が行われたが、決裂したことから、9日に全国一斉のストを決行した。全医労では「全国の国立病院は地域医療や重症心身障害などの専門医療を担うとともに、新型コロナ病床の確保、感染拡大地域への看護師派遣など、少ない人員体制の中で職員は懸命に医療を支えてきた。しかし、賃金は低く抑えられ、増員もない。使命感だけでは安全・安心の医療を守れない。国立病院の機能強化、賃金・労働条件の改善でやりがいをもって働き続けることのできる職場づくりを」と主張している。

 機構が運営する県内の和歌山病院など2施設がストに参加した。和歌山病院では病院への進入路となる県道沿いで行われ、全医労和歌山支部の同病院職員、OB・OG、地区労関係者ら8人が参加。看護体制に支障が出ないよう配慮の上、「大幅賃上げ」ののぼり、「国立病院の機能強化を求めます」の横断幕、プラカードを手に午前8時半から約45分間アピールした。

 ストに参加した全医労和歌山支部書記長で同病院重心病棟で働く高田悦子さんは、「地域医療構想で病床が減り、休棟していた病棟を急きょコロナ病棟とするなど、少ない人員の中で懸命に働いているが、賃金は上がらない。重心病棟では24時間看護が必要な患者さんがたくさんいらっしゃいますが、人員不足は深刻で、命を守る現場のことをもっと知ってほしい。南海トラフ地震等も懸念される中、機能強化が本当に必要です」と訴えている。

 病院機構本部はストを受けて「これまで定期昇給の賃上げ率1・34%に加え、人員確保につなげるための初任給を含めた若年層への2%のベア、臨時特別一時金(常勤15万円、非常勤12万円)を提案し、ストを回避できるようにぎりぎりまで交渉したが、妥結に至らず残念。今後も労使関係の維持に努めていきたい」と話している。