昨年の大河ドラマ「鎌倉殿の11人」での熱演や紅白歌合戦の司会でも話題となった、今や日本を代表する俳優、大泉洋のエッセイ集です。

 彼の名を世に知らしめた北海道ローカルのバラエティ番組「水曜どうでしょう」や「おにぎりあたためますか」が好きで、再放送をよく見ていました。それ以来、画面に大泉洋が映っていると注目してしまい、とても気になる存在に。あの独特の雰囲気と場を明るくする話術にいつの間にか惹かれていました(笑)。そんな彼のルーツを探りたいと購入したこの本。大泉洋がまだ北海道を拠点に活動していた1997年から2005年までに雑誌で執筆連載していたエッセイ108編が収録されています。中には北海道の雑誌でしか連載されていないものもあり、ファンにとっては貴重。水曜どうでしょうの裏話や、彼が所属する演劇ユニット「TEAM NACS」のエピソードなどが書かれています。発行は2013年と10年前になりますが、40歳になった当時の大泉氏本人の振り返りコメントや書き下ろしエッセイも入っています。テレビで見かける軽快なテンポの語り口同様、「大泉洋がしゃべっているよう」な饒舌エッセイで、所々に笑いが散りばめられているところはさすがです。

 エッセイを執筆していた当時の彼の年齢は24歳から32歳。北海道の大学生からローカルスター、全国区のテレビに出始めた頃にかけての時期になります。目まぐるしく変化していく8年間になるのですが、文章も若気のいきり(?)から徐々に地に足付いた感じに。本書ではその間の心情と自負についてなども書かれており、なぜか人を引き付けるその魅力についても自ら分析。

 高いコミュニケーション力の秘密も垣間見ることができ、生きる上での参考にもなりました。表紙のイラストは大泉氏がファンのあだち充さんです。(鞘)