今年も残り10日。今月13日は「正月事始め」で、正月準備を始める日とされる日だった。このことを知ったのは、御坊市の小竹八幡神社に奉納される大絵馬を取材するようになってからのことだ◆氏子の木村洪平さん(59)が毎年、干支の動物を親子で描いて「事始め」の朝に奉納。今年の12月13日にも、かわいい白ウサギの親子を描いた絵馬が奉納された。跳ねる子ウサギを父ウサギ、母ウサギが見守る構図で、躍動感を感じる。兎と縁の深い月も、銀色で描き入れられた。「月にもウサギを描こうと思ったのですが、4羽になってしまうので…」と木村さん。月にウサギが棲むという夢のある伝説はアジア各地にあり、月の兎は「玉兎(ぎょくと)」と美しい名で呼ばれる◆小竹八幡神社の主祭神、小竹大神は大国主命(おおくにぬしのみこと)とされ、白ウサギはそのお使い。木村さんは「格別の思いがあり、身が引き締まりました」という。同神社で大絵馬の奉納が始められたのは、遷宮300年に当たる昭和52年(1977)、当時は木村さんの大叔父に当たる山中襄さんが描き始め、続いて木村さんの父の靖夫さん。山中さんの時は大晦日に奉納されており、靖夫さんから「事始め」に奉納を始めたという。木村さんは2002年の「午」から受け継いだ◆「今年の漢字」には、同時多発テロが起きた01年以来21年ぶりに「戦」が選ばれた。今年の主要な出来事といえばロシア軍によるウクライナ侵攻に尽きる。ウクライナのみならず全世界にとっての重大な危機である。自然災害ではなく人為的な行為である以上祈りなど役に立たないかもしれないが、やはり状況の好転を祈らずにはいられない。勇猛な虎から平和的な兎へと掛け替えられた、大絵馬に託して。  (里)