日本では盆と正月が2大年中行事。その1つの盆が13日から始まる。正式名称は「盂蘭盆会(うらぼんえ)」。日本古来の祖霊信仰と融合し、亡くなった先祖の霊を迎える仏事である。先祖を生前過ごした自宅に迎え入れ、供物をそなえて経をあげる。地方によって風習が異なるが、提灯を飾ったり供物を川に流すなどの習わしがある▼盆の起源は7世紀ごろまで遡るという。釈迦の弟子の目連は神通力で亡くなった母親を探したところ、餓鬼道に落ちて苦しんでいるのを見つけた。母親を助けるにはどうしたらいいかと釈迦に相談すると、釈迦は「僧侶たちに食べ物を供養し、一緒に祈りなさい」と説いたという。目連は教えを実践し、母親は極楽往生を遂げた。この伝説が盆の由来で、盂蘭盆経と呼ばれる経の中に記載。あの世の先祖や故人に食べ物を供えて共に暮らすことをいう意味合いがあるという▼今の平和や豊かな経済を構築したのは過去を生きた全ての人たち。盆はその功績を残した人たちが霊となって帰って来る。筆者の身近な故人で言うと、強情だった父親、やさしかった祖父母。そして、昨年9月に亡くなった会社の同僚も。盆期間中の15日は終戦記念日とも重なるが、祖国を守るために一命を捧げた兵士の霊も家族と一緒に和やかなひとときを過ごす▼しかし、最近の現世は凶悪犯罪、虐待事件などが発生し、連日のように暗いニュースがテレビや新聞で報じられている。企業や政治家らの不祥事も後を絶たない。故人が今の世の中を見たら、「昔はこうでなかったのに…」と嘆いてしまうかもしれない。せめて同僚にだけにでも顔向けできるようにしとかねば。(雄)