人権問題に厳しく、米国ナンバー3の政治力を持つといわれるペロシ下院議長が台湾を訪問し、台湾への揺るぎない支持を表明した。蔡総統も「台湾は民主主義を守り、世界の民主主義国家と協力する」と述べ、軍事的脅威には屈しない姿勢を示した。

 これに対し、両国と対立する中国は激しく反発。人民解放軍が台湾を取り囲む海空域で軍事演習を行い、4日からはミサイル発射も含む演習に切り替えて威嚇を続け、米国もフィリピン海に空母打撃軍を展開するなど緊張が高まっている。

 台湾といえば、昨年12月の台湾のシンクタンクが主催したシンポジウムで、安倍元首相が「台湾有事は日本有事」と述べ、台湾でことが起これば日本、さらに同盟国の米国の問題でもあるとし、中国をけん制した。

 有事とは、できるだけ銃弾やミサイルが飛び交う戦闘のイメージを遠ざけようとする日本特有の婉曲的表現だが、この場合の意味するところはまぎれもなく戦争。日本はウクライナ危機に学ばねばならない。

 ウクライナと台湾はどちらも同盟国を持たず、国連安保理常任理事国と対立している。ウクライナはNATO非加盟だったためロシアの侵略を受けたが、同じ民主主義の欧米諸国が結束し、ウクライナ軍を強力に支えている。

 非同盟の他国の武器や情報の提供、資金の援助、経済制裁も、「自国の防衛は自らの力で努力する」という当たり前の姿勢があってこその話で、このウクライナの現実、目の前の台湾の危機をみて、すべきことはいうまでもない。

 新年度予算編成に向けた政府の基本方針が決まった。積極財政派として、防衛費大幅引き上げを主張してきた安倍氏はいない。岸田首相は本気で日本の決意を示す気があるのか。(静)