もし日本が他国から攻められた時、わが子を戦地に送り出すことができるだろうか。それは永遠の別れと大きな違いはない。かつては赤紙が届くと、誰もが兵隊として戦地へ赴いた。喜んで出兵した人もいるかもしれないが、全員がそうとも限らなかった。生きて帰ることが恥ずかしいことと思われていた時代。家族も言葉では言い表せないような複雑な心境になったことだろう▼ロシアがウクライナに侵攻して以来、約1カ月半が経った。報道によると、民間人も殺害され、戦場となったまちでは建物のほとんどが破壊された。インターネットでは「ウクライナが白旗を上げて降伏すれば、大勢の命が助かる」という書き込みもあるが、ゼレンスキー大統領が選んだのは国を守ることで、祖国の危機に海外で住んでいるウクライナ人6万人以上が防衛のために帰国したという。そこには母国に強い愛着や誇りがある▼仮に日本がウクライナと同じような立場になったら、人命を第一に考えて白旗を上げるのか、それとも自国の主権を守るために命がけで戦うのか。以前のテレビ番組で、次期総理大臣候補とまで言われている大物政治家が評論家の「戦争で最高指揮官だったらどこをゴールに戦闘員に戦わせるのか」という問いに対し、「申し訳ないですが、最後まで戦っていただくことになると思います」と答えた。平和ボケしているといわれる日本。それには決死の覚悟が必要になる▼かつての日本も最後まで戦った。守らなければならないものがあったからだろう。それが正しいことだったのかどうかは分からない。しかし、今の平和と繁栄があるのは、尊い命の犠牲の上にあることは間違いない。(雄)