日高川町農村環境改善センターで21日、日高地域鳥獣被害対策本部(本部長=日裏勝己印南町長)の研修会が開かれた。日高地方の農業者や県と市町、JA紀州の職員、猟友会の会員ら33人が集まり、専門家の講演とグループワークで、とくにニホンザル被害の効果的な軽減方法を勉強。専門家からは、成果を上げている先進地の具体的な対策が示されたうえで「地域の力で被害を軽減できる」との話があり、参加者は熱心に聞き入っていた。

 日高振興局によると、2018年度の鳥獣被害額は果樹を中心に4200万円に上り、そのうちサルは約40%を占める。年々、サルの捕獲数を増やしているものの被害軽減の決め手にはなっておらず、効果的な対策を学ぼうと防除が難しい獣類のニホンザルに絞った研修会を企画した。

 講演会ではニホンザル対策の専門家、㈱野生動物保護管理事務所関西分室副室長・清野紘典さんが「地域における効果的なニホンザル対策の進め方」をテーマに話した。清野さんは、効果的な被害軽減へは自然災害と同じように、自助(地域の一人一人が取り組むこと)、共助(地域で力を合わせて実現すること)、公助(行政の責任として推進すること)が必要と主張。自助と共助に該当する「地域の被害対策」については、餌となる収穫しないカキやクリ、田畑に残された野菜などの誘引物の除去をはじめ、柵の設置、追い払い、やぶをなくす――の4点を挙げ、捕獲などの公助にプラスして不可欠であることを強く訴えた。

 柵の設置では電気柵がとくに効果的と指摘。追い払いではロケット花火や電動ガンなど飛び道具の活用を推奨したが、「道具に頼りきるのはよくない。人の圧力が大事」と人海戦術の重要性をアドバイス。1匹でも手を抜かない、複数人で行う、どこでも誰もが追い払う、一歩でも山に入って追い払うなどの注意点も紹介した。滋賀県では追い払い効果がはっきり確認されている事例があり、「追い払い後、7、8年間サルは来ていない。効果がある」と述べた。

 やぶの対策では宮城県の事例から「餌場、隠れ場所になる。刈り払って見通しをよくすると、集落に出にくくなる」と分かりやすく説明。最後に「捕獲だけ進めても被害は減らない。この4つの方法にいかに取り組めるかが被害軽減のポイント」とし、地域の力しだいでサル被害防止が可能であることをあらためて強調した。

写真=清野さんが効果的なサル対策を説明