先の参院選和歌山選挙区は現職世耕氏の圧勝に終わったが、全国では自民が議席を減らし、自公と憲法改正に前向きな維新を含むいわゆる「改憲勢力」は、改憲発議に必要な3分の2を割った。

 参院全体の3分の2は164議席。改憲勢力は非改選が79議席で、3分の2を維持するには85議席が必要だったが、結果は自公と維新で81議席。今後、安倍首相はどう勢力を維持、増強していくか。

 日高新報は今年も終戦の日に合わせ、戦争体験者に話を聞く連載を行った。日本が二度と戦争を起こさないために、現実の痛みを国民が忘れてしまわぬよう、戦後世代に伝えることが目的だ。

 首相はなぜ憲法改正を目指すのか。北朝鮮と中国の核の脅威にさらされ、米韓同盟が消滅の危機にあるいま、自衛隊の力を高め、日米同盟を強化し、敵に先制攻撃を思いとどまらせる。国民の生命を守るためである。

 孫子の兵法に、戦わずして勝つという原則がある。戦闘をせず敵を降伏させるには、防御を固め、侵攻されてもすぐさま反撃、叩き潰せる軍事力が必要。ようは戦争をしたくなければ、最大限の戦争の準備をしておけという話。

 軍隊があれば戦争をする、軍隊がなければ戦争をしないというのは誤りで、日本が軍備を捨てても他国が同調するわけがない。ウイグル、南シナ海、クリミア半島、沖縄県尖閣諸島の現実を見ても、軍備を捨てた日本は即、中国に侵略されてしまうだろう。

 憲法を改正するかしないか、それを決め、国を動かすのは国民。戦争の痛みを思い返し、広島、長崎、すべての戦争犠牲者の慰霊のためにも、目の前の危機を直視し、核武装も含めた国民の議論が必要。戦争をせず、この平和を守るために。(静)