JICA(独立行政法人国際協力機構)の青年海外協力隊員として、2016年10月からベトナム共和国へ派遣されていた御坊市塩屋町出身の作業療法士溝口景子さん(29)が2年間の任務を終え、元気に帰国した。

 日本の作業療法を伝えるため、南部の都市ホーチミン市にある省立医療薬科大学附属病院に勤務しながら、現場の医師や看護師、理学療法士に、日々の患者の診療・リハビリを通して作業療法のノウハウを指導した。

 儒教国家のベトナムでは、入院患者には家族が泊まり込みで付き添い、食事や移動の際は家族が全て介助するのが当たり前。看護師や理学療法士も筋力アップ等のリハビリは熱心に行い、患者も積極的に取り組むが、食事や歩行、トイレなどの動きを細かくトレーニングする作業療法には関心が低い。そんな状況に赴任当初はベトナム人スタッフと意見が対立、理解してもらえず落ち込むこともあったが、1年が過ぎたころから自分の指導に問題があることに気づき、互いの考え方の違いを認め合ったうえでよりよい策をとるようになってストレスは激減した。

 赴任前、公立の大きな病院なので設備、スタッフもそれなりに充実していると思っていたが、実際はリハビリ室もなければ器具や道具もなく、スタッフの数も不十分。日本の病院との違いの大きさに愕然としたが、それでも「患者のために」という同じ目標に向かって取り組むうち、仲間も患者も家族も作業療法の重要性を理解するようになった。任期が終わるころには、当初立てた業務の効率化や知識の底上げ、患者を通して作業療法の技術を伝えるといった目標はほぼ達成できたと感じ、「ベトナムはしんどいこともあったけど、多くの人に支えられ、楽しい2年間でした。なにより自分の考え方を変えられたことが大きな成長だと思います」という。

 今後はベトナムの支援を始める予定の沖縄県の民間病院で働くことになり、作業療法士として働き、ベトナムともかかわりながら、和歌山でも高校生向けのセミナー等の講師を務める。本紙の連載「ベトナム奮闘日記 心通わせて」は今月27日付が最終回となる。

写真=「楽しい2年間でした」と溝口さん(本社会議室で)