日高地域鳥獣被害対策本部(本部長・日裏勝己印南町長)の会議が10日に開かれ、管内の平成27年度鳥獣被害状況が報告された。それによると、ニホンザルの農作物被害額が、4年連続の増加で初めて2000万円を超え、一層深刻化。26年度に初導入して大きな成果を挙げた最新鋭の捕獲おりも、27年度では設置数を増やしたにもかかわらず捕獲数が大幅に減少。一般に「賢い」とされるサルに早くも警戒されて効果薄となったのか、関係者らは人とサルの知恵比べに頭を悩ませている。
 日高郡市内の鳥獣農作物被害額は、平成27年度が5464万9000円で、前年度比約1割(516万8000円)の増。被害額のうち、サルが4割、イノシシが3割、シカが1割を占め、あとはカラスやアライグマ、タヌキなど。品目別でみると、被害が最も多いのは果樹で6割、次いで野菜が2割。市町村別の被害額は、果樹生産地となっている由良町と日高川町がいずれも約1400万円でダントツとなっている。
 特に被害が深刻なサルの農作物被害額をみると、平成22年度が1770万円で、23年度に1480万円まで減少したが、以後増加傾向が続き、24年度は1670万円、25年度1730万円。
 県は26年度、由良、日高、日高川町に三重県で開発された捕獲装置「まる三重ホカクン」を3基設置。おりにカメラやセンサーを取り付け、携帯電話やパソコンで現場の状況をリアルタイムに監視できるとともに、おりの扉を遠隔操作で閉めることが可能なシステムとなっており、26年度は郡市全体で前年度比194匹の大幅増となる559匹を捕獲。しかし、捕獲数は増えたが、サルの個体数がそれ以上に増えているのか、人里への慣れが出ているのか、農作物被害額は増加傾向に歯止めがかからず、26年度は前年度比約140万円増の1870万円。27年度はさらに最新の捕獲おり5基を追加したが、捕獲数は356匹にとどまり、おりを設置していなかった25年度よりも9匹少ない状況。被害額は2070万円に増加した。
 全国的にサル被害については、新たな対策をしてもすぐに慣れるのか見破られるのか、効果が薄れていく傾向にあるが、日高地方での最新鋭おり対策はまだ2年を過ぎたところ。同対策本部では「今回の最新鋭おりの効果が早くもなくなったのかどうかはまだ分からないが、設置事業は26、27年度の2カ年で終了。いまのところ次の秘策がない。どうすればいいものか...」と話している。