日高町阿尾、比井崎漁業協同組合(初井富男代表理事組合長)が3年越しで開発して販売を始めた地元名物クエの胃袋を使った缶詰め「くえのもつ缶」は、ことしの製造分がすでに完売する人気となっている。来年分は3月をめどに販売するが、いまのところクエの水揚げが少なく、製造個数がことしよりも減る見通しで、より一層「手に入りにくい」という希少価値の高さで注目を集めそうだ。
 クエは大型魚だが、胃袋は1匹につきわずか100~200㌘しか取れないという希少部位。阿尾漁港で年間さばかれているクエは約50匹で、1匹の胃袋から製造できる缶詰めは2缶から4缶。ことしは150缶の限定生産で販売していた。胃袋は淡白な味わいだが、コリコリした独特の食感が特徴で、甘辛く煮込んで缶詰めにしたことで、酒のさかななどにもってこい。1缶(80㌘入り)1000円。阿尾漁港内の直売所で販売して1年目ということもあって、知名度はまだ高くないが、珍しさが話題を呼んで、順調に売れ切れた。来年もことしと同じ150缶の製造を目指しているが、漁協によると「今シーズンのクエの水揚げが少ないので、どこまで製造できるのか分からない。本当は増産できるぐらいであればいいのだが、とてもそこまでいかない」と話している。
 クエはスズキ目ハタ科に属する海水魚で、高級食材として有名。日高町はクエの町として知られており、民宿などで提供されているほか、クエフェアなどPRイベントも行われている。クエは料理にしたら捨てるところがないと言われ、以前から胃袋は民宿などで湯引きや白みそ煮などにして振る舞われることもあるが、缶詰めは全国的にも珍しい。クエ自体〝幻の魚〟と呼ばれるが、製造数の少なさゆえに〝幻のクエのもつ缶〟となりそうだ。
 漁協ではサバの缶詰めも同時開発しており、こちらは直売所で販売中。年末年始は31日から8日まで休みとなっている。