南洋のチョウ、スジグロカバマダラが6日、日高町志賀で確認された。主にインドやオーストラリア、国内では宮古島以南の南西諸島に分布するチョウで、県内への飛来は非常に珍しい。海南市の県立自然博物館では「主な文献などを調べたが、これまでに県内で確認された記録はなく、初確認といっていいのではないかと思う」と話している。
 場所は個人所有の公園「志賀の郷」。この時期になると、たくさん植えられたフジバカマに渡りチョウのアサギマダラが飛んでくるが、写真愛好家の中西次郎さん(78)=御坊市湯川町小松原=がアサギマダラに混じってオレンジ色の見慣れないチョウ2匹を発見。よく似ているが模様が少し異なり、一つの花にとまって仲良く蜜を吸っているところをカメラに収めた。昆虫に詳しい中西さんは「この辺ではあまり見られないカバマダラの仲間ではないか」と写真を海南市の県立自然博物館へ送って問い合わせたところ、「間違いなく1匹はカバマダラ、もう1匹は極めて珍しいスジグロカバマダラ」との答え。どちらも南洋のチョウだが、カバマダラはこれまで白浜や有田など県内各地で何度か確認の記録があり、中西さん自身も16年前に御坊市の数カ所で観察したことがあった。だがスジグロカバマダラについては県内確認の記録は見当たらず、県立自然博物館では「非常に珍しい。おそらく台風の風でここまで飛ばされてきた迷蝶と思われる。今の季節にここで繁殖しても冬は越せないので一時的な来訪だが、貴重な情報を寄せて下さってありがたい」と話している。
 スジグロカバマダラはオレンジ色の鮮やかなチョウで、羽にはっきりとした黒い網目模様があるのがカバマダラとの違い。体内には毒があり、危険性を知らせるためか非常にゆるやかに飛ぶ。南紀カメラクラブ会長も務める中西さんは、「カメラを構えている時、ちょうど珍しいカバマダラともっと珍しいスジグロカバマダラが同時に目の前の花に飛んできてくれるなんて、写真の神様が降りてきたようでした」と、貴重な写真撮影の成功を喜んでいる。