御坊市塩屋町南塩屋の県農業大学校就農支援センターで、離転職者等を対象とした社会人課程の研修がスタートした。ことしは県内外から男性4人が受講し、東日本大震災の原発事故の影響で福島県から美浜町へ移住した中澤孝徳さん(29)は元原発作業員。生まれ育った大熊町へ戻れるめども立たず、「以前から興味のあった農業で人生を再スタートしたい」と和歌山での就農、永住を決意した。
 社会人課程研修は今月19日から来年2月19日まで続き、平日は毎日午前9時から午後4時まで、農産物の生産から販売に関する知識、技術を講義と実習で身につける。当面はスイカやナスビ、ウメ、ブルーベリーなど夏の野菜と果樹を栽培し、9月から1月までは毎月5日間(計25日間)の農家実習も始まり、9カ月で農業のプロフェッショナルを育成する。ことしは貝塚市、和歌山市などから4人が受講している。
 中澤さんは福島県でサラリーマン家庭に育ち、東日本大震災までは原発検査の作業員として、全国の原発で仕事をしてきた。福島第一原発事故が起きたときは青森の原発にいたため難を逃れたが、事故発生から4年が過ぎたいまも両親は埼玉県に移ったままで、大熊町の実家周辺には除染廃棄物の中間貯蔵タンクが建設される予定。再び福島で暮らせるめども立たないなか、「もともと自然に携わる仕事がしたかった」という中澤さんはことし1月に美浜町へ移り住み、和歌山での就農を決意したという。
 栽培したい農作物はミニトマト。「私はまだ独り身ですから、1人でも栽培できて、収益を上げるには、食べるのも大好きなミニトマトがいいと思います。この和歌山にしっかり腰を据え、農業で人生を再スタートしたいです」。22日は小玉スイカの研修園地で、真剣な表情で指導員の話に耳を傾けていた。