新しい年が幕を開けて早くも2週間だが、筆者にはことし第1回の本欄。2015年という年号にはちょっとした思い入れがある
  今から38年前、「ジェッターマルス」というアニメが放映されていた。「鉄腕アトム」のリメイク版だ。幼少時の筆者はこれが好きで、「時は2015年」とうたわれた主題歌の一節をずっと覚えていた。それから年を重ね、いろんな変化に時の流れを感じるたび「それでもまだマルスは生まれていない」と思っていたが、とうとうその年に現実が追いついた
 近未来を描いた作品には当時の世相が反映される。東西冷戦が始まった頃の1948年に書かれたオーウェルの「1984年」は悲劇的な完全管理社会を描く。経済が復興し始めた1957年のSF「夏への扉」では、21世紀が夢のような未来として描かれる。家事は「おそうじロボット」がやり、エアカーが宙を飛び、月への定期便が出ている。クローン技術で体の部分のスペアができ、取り替えられるので老いることがない
 現実の2015年は「人間そっくりのロボット達が人間と一緒に生活している」ような社会にはなっていないが、情報ネットワークや家電の発達による生活の快適さは1977年当時と比べるべくもない。「おそうじロボット」もできている。といって、悩みが何もかも解決された夢のような世界が実現しているわけでもない
 いつになっても人は、今ここにないものを未来に期待するのかも知れない。あの頃の「未来」である今も、現在を少しでもよくしようと社会は動いている。現実はそう単純ではないが、その連続がよりよい未来を呼び寄せるのだろうと、新年だから明るく考えておこう。  (里)