業の第一線で活躍し、後進の指導・育成にも貢献している優秀な技能者をたたえる国土交通大臣顕彰者(建設マスター)が決まり、県内は7人、日高地方からは御坊市の中西瓦施工店代表の屋根工中西久美(ひさみ)さん(64)が選ばれた。26歳で転職し、見習いから始まって屋根工事一筋38年。時代とともに現場のニーズも変わるなか、いまも現役で「顧客の心に届く」仕事を心がけている。
 中西さんは25歳まで製材業の仕事をしていたが、26歳で有田市の瓦の製造・販売・施工の会社に再就職。自分より若い先輩の下について、屋根の仕事全般を一から学び、2年後には湯浅の別の会社に移って修行を積んだ。昭和62年には独立し、湯川町富安の自宅に「中西瓦施工店」をオープン。8年前には湯川中学校の北側に事務所を構え、現在は長男哲也さんら5人の現場スタッフのリーダーとして、新築住宅の瓦ふき、既設住宅の雨漏り、屋根修理等に対応している。
 木造住宅の屋根瓦は、19年前の阪神・淡路大震災以降、それまで主流だった土で固定する日本瓦が敬遠されるようになり、現在は神社や仏閣を除いて、屋根はほとんどが軽い洋風瓦。法改正や新商品の登場で施工技術も変わり続けるなか、中西さんは施主が思い描くイメージに出来る限り近づけるよう、自分にも若手の職人にも一切の妥協を許さず、「お客様も自分も納得できるまで、何度でもやり直し、心に届く仕事」を追求しているという。
 本年度、県内から選ばれた建設マスターは土工、建設機械運転工、板金工など7人で、個人事業者は中西さんだけ。表彰式は10日、東京のメルパルクホールで行われる。晴れの受賞に中西さんは、「職人としてのスタートは遅かったのですが、これまでこの仕事を続けてこられたのも、自分を支えてくださった先輩や仲間のおかげで、今回の受賞は家族の協力を得てコツコツ真面目に仕事をしてきた結果だと思います。これからも笑顔を忘れず、『まちの屋根屋』として地域に貢献できれば」と話している。