全国的に自殺が大きな社会問題となっているが、日高地方ではその全国平均に比べ自殺での死亡率が高いそうだ。原因のトップは健康問題で、背景にはストレスから来るうつ病などの精神疾患がある。当然ながらその対策が重要だが、いま注目されているのは〝命の門番〟と呼ばれているゲートキーパー。自殺に向かおうとしている人を食い止める役割で、悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守っていく。別に難しい勉強や資格が必要なわけではなく、要は周囲の人のちょっとした変化に気を配ってあげる心構えがあればいいのだと思う。
 取材で知ったのだが、自殺のリスク評価というのがあって、悩んでいる人に対してストレートに「自殺を考えていますか?」と聞くことが大切なのだそうだ。そして自殺を考えているなら方法や時間、場所なども聞き、自殺への深刻度を判断し、対策につなげていく。専門家でもない一般の人がこんな質問をするのは少し抵抗があるような気もするが、専門家からの質問じゃないからこそ、悩んでいる人も心を開いてくれるケースがあるかもしれない。ただ、相談を受けている側は一人で背負いこまないこと。深刻なケースを見つけたら専門機関に相談することも大切。うつ病はだれでも起こる可能性があり、〝自殺の連鎖〟だけは回避すべきだ。
 そんなゲートキーパーの役割を担っていこうと、最近日高地方では老人ホームや消防などの職員が御坊保健所の養成研修を受けたが、そういった職種に限らず、広く一般もゲートキーパーになってもらえば当地方の自殺率も低下すると思う。行政には「みんなが命の門番」ぐらいの目標を掲げて養成研修を推進してもらいたい。   (吉)