5月中旬から始まっている梅の収穫も、終盤を迎えている。平野部ではほぼ終了し、現在は山間部の一部で残っている程度。梅農家にとっては1年間の作業の集大成の作業といえ、最も忙しい時期でもある。まさに猫の手も借りたい状態だ
 その梅の収穫シーズンも、時代の流れとともに変化しつつある。筆者が主産地のみなべ町を担当して20年近くになるが、その当時と比較すると地域の行事や慣わしが変わってきた。例えば、以前は家庭の台所を預かる女性を支援しようと共同炊事という独特のバックアップ体制がみられた。地域の集会所などで夕ご飯のおかずつくりを行い、少しでも農家の負担を軽減するという取り組みだ。しかし、近年は小売店で弁当や惣菜の販売が充実したために必要性が薄らぎ、いまでは行われなくなっている
 旧南部川村の小中学校では、梅取り一日勤労体験が実施されている。児童や生徒は学校に登校せず梅の農作業に従事するという、梅の里ならではの伝統的な行事。しかし、以前は各校とも平日に行われていたが、現在では休日の土日曜日を利用するようになっている。「平日に実施することに大きな意義がある」という意見もあるが、学校の週5日制の導入で授業時間の不足からそうもいかないという現状だ
 必要性が薄らぎ、合理的が少なくなると、物事は変化していく。それは仕方のないこと。しかし、伝統を受け継いでいくことで大きな意味を持つこともある。日本一の梅産地に古くから伝わる行事が存在するということ大きなアピール材料となる
 筆者は梅の収穫シーズンが以前のような活気がなくなったと感じる。それは年々低下傾向にある価格の問題だけではないのかもしれない。     (雄)