今月2日付で、昨年1月30日付から1年5カ月にわたった百年史編集委員会事務局による連載「日高高校百年史こぼれ話」が終了した。1914年の日高高等女学校開校に始まり、1948年の日高工業学校閉校まで34年間の記録だ
 最終章の「御坊商業から日高工業へ」でもさまざまなエピソードが紹介された。「義足の剣士」として全国に名を馳せた東山健之助氏率いる戦前の剣道部、漁船の帆をもらってまわしを作った相撲部などの活躍。戦時中、伝令の練習で「西川に鯉が三匹泳いでいる」が「入山に鯉が三匹泳いでいる」となって大目玉をもらったこと。学徒動員で、松下電器が設立した松下造船堺工場へ駆り出され、作業中に東南海地震に見舞われて製造していた船の骨組みが大きく揺れ地面から水が噴き出したこと。ある動員先では「ダイテン」と隠語で呼ばれた犬の肉が食事に出たと思われること。浜ノ瀬で作業していた学徒動員生4人が、空襲の犠牲になったこと...
 現在、編集作業が大詰めとなっている「百年史」。100年分の出来事を細大もらさず紹介することは不可能である以上、取り上げるべき部分やその描き方を決めねばならない。原稿をいただくため編集会議の席にお邪魔すると、いつも内容や表現について白熱の議論が交わされていた 
最終回では、「学んだ一人ひとりの生徒や保護者、教師の思いが山のように積み重なっている」ことへの実感が述べられた。どんな大きな歴史物語も、それを構成するのは一人一人の人間の思いや行動だ。歴史は今も続いており、物語は生まれ続ける。その渦中にいる我々は、時おり足を止め、流れの道筋を確かめる必要がある。歴史をみることの意義を教えてくれた連載だった。 (里)