御坊市が薗地内に計画している津波避難タワーの入札延期問題を振り返る。平成25年度当初予算で1億3000万円の事業費を計上し、昨年11月に工事入札を行う予定だったが、指名7業者から「予定価格が低く資材の調達が困難」との指摘があり、入札を延期。以後、資材コストを下げるため、特殊工法を省いて在来工法で施工するよう設計を見直した。この段階で当初予定していたことし3月末の完成は先送り。次の年度にまたいだことで、さらに鋼材や人件費の高騰、ことし4月の消費増税もあり、予算内では工事ができないことから、現在会期中の議会で2500万円の追加補正を余儀なくされている。
 入札延期、予算追加は市では異例の事態だが、原因は何か。市によると、当初予定の特殊工法では、メーカーが独自に強化して特許を取った鋼材を使うため、コストが高くなり、入札予定価格に対して数千万円の「乖離(かいり)」があったと説明している。となると、業者が入札の参加を拒否したことはいたって正しい判断だ。
 ならば最初から在来工法での施工にしていれば、こんな事態を回避できたのではないか。特殊工法でも在来工法でも地震や津波に耐えられるならどちらでもいいが、一般的には在来工法の方がコスト安で、最終的に市も在来工法を選択。この選択が鋼材の価格高騰や消費増税前にできていれば、余計な予算追加は必要なかったかもしれない。つまり市は初期の判断に少なからず疑問を持たれても仕方がない。
 一番大切なのは、いつ起きるか分からない地震に対して早期にタワーを建設することであり、いまさら「たら、れば」を言っても仕方ない。ただ、行政側は問題点をしっかり整理し、同じことがないよう努めてほしい。   (吉)